深海魚でも夢を見るんだよ

イラストや4コマ漫画なんかを不定期でアップしてます。ブログの方向はわりと変わったりしますw

① 懐かしきSNS

以前利用していたSNSに久しぶりにログインした。


このSNSガラケー時代に人気を博した。

特に日本におけるソーシャルゲームの礎を築いたと僕は考えている。

自分自身もソーシャルゲームのTVコマーシャルを見て、このSNSのアカウントを作成した。

ゲームそのものは面白かったけど、それ以上に同じSNSに参加している人同士のやりとりが楽しかった。

自分の書きこんだどうでもいいようなネタにもわざわざ食い付いてくれた。

ネットとはいえ画面越しにいるのは人間であり、気恥ずかしさを交えて言うならハートウォーミングな日々だった。


そんな欠かせない存在となっていたSNSに変化の兆しが表れたのはスマホの登場だった。

スマホに機種変した利用者がどんどん離れていったのだ。

SNSのプラットフォーム型のゲームやアプリより、スマホのゲームやアプリの方が楽しいからだと思う。

でも僕個人としては、使い勝手が悪くなったことが原因ではないかと思っている。


まあ、そんなこんなで過疎化は進んでいき、SNS内の友達も一人やめ二人やめ、音信不通になったり、参加していたコミュニティも更新されなくなっていった。


僕もスマホに変えてからは使いづらさを感じ、距離が離れていった。

それでも続けているSNS友はいたから、たまにアクセスして新たな書き込みがあればコメントを残したりしていた。

その彼も数か月前に「転生します」と残し去っていった。


今、思い出したようにログインしたきっかけは、最近ブログを始めたらSNSが今どんな状態か気になったから。

なんならアカウントを消そうかとも思う。残ってても害はないけど。

それでも心のどこかで多少の変化を期待しながら。



                                                              ※


スマホの画面上には最終更新が二年くらい前で止まった自分のホーム画面が写っている。

ちなみに、いつのまにやらメール機能がなくなっていた。

いや、なくなるのはいいんだけど、今までの履歴が消えたのは非常に残念だった。


あとは、いくつか参加しているコミュニティの一つが更新されてたくらいで他は前回とそう大差なかった。


このSNSでは自分のホームに訪れた相手の履歴が残るので一応確認しておく。

友達の名前があれば、まだやっているんだと安堵感にも近い気持ちにさせてくれる。


けれども、そこに知ってる名前を見つけることは出来ず、知らない名前の履歴が一つあるだけだった。

通りがかりの人だと思われるのだが、なぜか三連続で記載されている。


アカウントを消そうと考えてるくらいだから、これ以上このSNSに関わる気持ちはないわけでスルーしてもいいんだけど、その記載されてるアカウント名に「音」という漢字が使われており、それは辞めた友達がつけていた名前にも使用されていた。


ただの偶然だとしても少々の期待を抱かずにはいられない。


少々の覚悟をもって履歴の人のホームに移動してみる。

投稿されている:記事は二つ。古い方は二週間前の日時になっていた。

簡潔に書かれたプロフィールにはリンクが張られてある。


記事には最近の出来事が書かれており、そこから推測すると住んでる地域や仕事は友達に似ている。

それよりなにより、記事の文体が彼のものだった。

人をおちょくってるようで自虐的。

僕は自分の気持ちが高揚していくのを感じた。


プロフィール画面に移動するとリンクをクリックした。

どうやらブログにジャンプできるらしい。

彼の作成したものなら面白いこと間違いない。


「アァー!」


突如、満員の通勤電車内に大音量で流れるエキサイトボイス。

スマホの画面にはそのHな動画が高画質で再生されている。


「ぷぉっ⁉」


自分の口から自分でも出したことのない音が漏れた。

周りを見ずともこの車両の乗客の視線を集めているのを感じる。

そもそもマナーモードにしていたはずなのに。


慌てて通信を遮断しようと試みるが、うまくいかない。

というか、電源を落とすこともできない。

フィッシング⁉

いや、ウィルスか⁉


次の駅まではまだ時間がかかる。

とにかく何とかしなければならない。


改めて動画を確認すると、どこの国か分からない文字で作成されたバナーが浮かんでいる。

慌ててタップすると何か確認画面みたいなものがでてきた。

それを冷静に判断する頭はもはやなく、とにかくタップを繰り返していく。


青色の箇所を何度かタップしたところで、英語表記の「Thank you」が表示され再生は終了した。


スマホは汗でぐっしょりになっていた。


                                                             ※


次の駅で降りるとトイレの個室に逃げた。

一人になり頭を冷やす時間が必要だと感じた。


なんであんなサイトに繋がっていたのだろうか?

友達と似てだだけの悪質業者だったのだろうか?

いくつかの疑問が脳裏をよぎったところで、ふと彼の最後の言葉を思い出した。


「転生します」